研究概要

長鎖ノンコーディングRNAに
着目した革新的なRNA創薬

長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の生理学的意義を解明し これまで治療不可能であった疾患に対する医薬品を開発する

なぜ長鎖ノンコーディングRNAに
注目するのか

生命の神秘を解き明かし、革新的な医療の扉を開くため、私たちは長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)に注目しています。この不思議な分子は、タンパク質をコードしないにもかかわらず、生命の根幹を支える重要な役割を果たしています。2007年のHOTAIRの発見を皮切りに、lncRNAの世界は私たちに驚きと可能性を示し続けています。遺伝子発現の調節、クロマチン構造の維持、さらには細胞の運命決定まで、lncRNAは生命の様々なプロセスに関与しています。この広大なフロンティアは、生物学の新たな地平を切り開くだけでなく、多くの疾患の理解と治療法の開発にも大きな可能性を秘めています。

どのようにlncRNAを研究し
応用するのか

私たちのグループは、以下のアプローチでlncRNAの研究と応用を進めています。

1

機能解明

数万種類あると推定されるlncRNAの機能を一つ一つ解明していきます。

2

疾患との関連性

様々な疾患とlncRNAの関係を調査し、新たな治療ターゲットを特定します。

3

RNA創薬

lncRNAの特性を活かした革新的な治療薬の開発を目指します。

これらの研究を通じて、生命科学の新たな章を開くとともに、医学・薬学分野に革命をもたらすことを目指しています。

lncRNAとは何か

lncRNAは、以下の特徴を持つRNAの一種です:

  • 200ヌクレオチド以上の長さを持つ転写産物
  • タンパク質への翻訳が行われない
  • 細胞内で多様な役割を果たす

代表的なlncRNAには以下のようなものがあります:

HOTAIR
エピジェネティックな遺伝子発現制御
NEAT1
パラスペックルの形成と維持、miRNAスポンジ
MALAT1
転写制御、スプライシング

これらのlncRNAは、生命の本質を理解する上で新しい視点を提供し、同時に革新的な治療法の開発につながる可能性を秘めています。未知の可能性に満ちたlncRNAの世界は、私たちに無限の探求の機会を与えてくれるのです。

lncRNA の主な作用機序をまとめた模式図

Cancer Gene Therapy volume 29, pages 1866–1877 (2022)

研究テーマ 1

肝疾患とlncRNAの機能解明

ヒトとマウスのゲノムDNAは約99%一致しており、lncRNAについても共通点が多いことが分かっています。しかし、種によってlncRNAの発現量や機能が異なる場合があり、ヒトとマウスの比較研究は、lncRNAの機能をより深く理解する上で重要となります。

さらにlncRNAは、様々な疾患に関与していることが示唆されています。例えば、がん、神経変性疾患、自己免疫疾患など、多くの疾患においてlncRNAの発現異常が見られます。そのため、lncRNAを調べることで、疾患の診断・治療法の開発に役立つことが期待されます。さらに、lncRNAの機能を制御することで、細胞機能を調節し、新しい治療薬を生み出すことを目指します。

研究テーマ 2

脳疾患とlncRNAの機能解明

ゼブラフィッシュとヒトのゲノムDNAは約70%の相同性を持ち、脳の基本構造や神経回路の形成メカニズムにおいて高い保存性が認められています。特に、神経発生や神経機能に関わるlncRNAには、種を超えて保存された配列や機能が存在することが明らかになってきました。しかし、ゼブラフィッシュ特有のlncRNAも多数存在し、これらが脳の発達や疾患にどのように関与するかを解明することは、脊椎動物の脳機能の進化的理解につながります。ゼブラフィッシュは、透明な胚を持ち、発生過程をリアルタイムで観察できるという利点があります。これにより、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんなどの脳疾患モデルにおいて、lncRNAの発現動態を生きたまま追跡することを目指します。

研究テーマ 3

生成AIを駆使したlncRNAネットワークの解析

生成AIを利用した機械学習は、膨大な量のデータを解析することで、人間の脳では見逃してしまうような複雑なパターンを自動的に学習することができます。この技術をlncRNAの研究に活用することで、従来の研究手法では解明できなかったlncRNAの機能や作用機序を明らかにすることが期待できます。具体的には、機械学習を用いてlncRNAとRNA結合タンパク質との相互作用を予測するシステムを開発することで、これまで未知だったlncRNAとRNA結合タンパク質の相互作用を多数発見することを目指します。lncRNAは、生命の謎を解き明かすための重要な鍵となる可能性を秘めています。深層学習という新たな武器を手に、lncRNAの神秘のヴェールを剥がしていくことを目指します。

これまでの主な研究成果

測ってきたこと

  1. 半減期の短い(4時間未満)lncRNAの機能解明

  2. 様々なストレス条件下におけるlncRNAの変動解析(ヒトiPS細胞、マウスES細胞)

  3. GAS5(lncRNA)の機能解明

  4. GAS5のRNA分解速度に着目して、その機能を解明

  5. BRIC-Seq法の開発

  6. ヒト細胞の全RNAの分解速度(半減期)をゲノムワイドに測定する手法の開発に成功

  7. 半減期の短い(4時間未満)lncRNAが、機能性RNAである可能性が高いことを発見

  8. 半減期の長い(12時間以上)lncRNAが、ハウスキーピング様のRNAである可能性が高いことを発見